re:ということは、指使いは・・・??(ご確認願います)  #13172
投稿者: ヘボモンケ (2001/07/19 01:56)

ありゃま、随分と盛り上がってきましたね。それだけ、クラッペンに皆さん関心が高いと
いうことでしょうかね。

知り合いの専門家に心当たりはないではないですが・・・

私も学生時代には、Tpの各倍音列は、両端開放条件での共鳴を考えるとちょうど周波数的に
それらしいところになるので、ロータリーさんと同様にてっきりそうなんだと思っていまし
たが、入力部はロータリーさんのおっしゃる通りに閉端になる訳ですから、おかしいと思っ
ていたのですが、それをうまいこと調整するためにあのベル形状があるようです。円筒管の
ままの形状ですと、周波数の影響はあまり受けずに、ほぼ開口部(厳密にはそのちょっと
先)のところで開放端反射をするのですが、ベル形状と周波数(波長)の関係で、低周波域
では、その開放端反射の位置がベルの奥の方になるようです。(円錐管の説明のページ未だ
良く読んでいませんが、モンケさんのおっしゃるように、ホーン形状の場合はまた違うよう
ですね。)考え方としては、入力部が閉端であるため、入力部開放端反射に比べて余分に
1/4波長の定在波が存在し、その長さは各倍音列の音の波長に依存しますから、低い倍音程
長くなるわけですが、丁度その余分な1/4波長分だけ、出口側の反射端の位置がベル端から
奥にあれば全長分の両側開放端円筒管での共鳴現象と等価になる訳で、実際にそのように
ベル形状が設計されているようです。

手元にある、ヤマハで管内の定在波モードを実測したデータを見ますと、1次では出口の
反射端位置が全長の1/3くらいまで奥の位置にあるようです。(理想的には真ん中にないと
いけない?)倍音列の次数が上がる程、だんだんとベル端面に近づくようです。一方、入力
部から最初の節の位置は概ね各倍音の周波数の1/4波長に存在するようなので、周波数に
関係なく、入力部はほぼ閉端であることもそのデータからわかります。

でも、管内の各倍音での節の位置を見ますと、必ずしも厳密に等間隔(1/2波長相当)ではな
く、特にベルに近く径が大きくなっているところでは、かなり間隔が異なってくるようで
す。また、この実験はB管のTpを直管にしてマウスピース部を加振し、管内にマイクを入れて
各部の音圧を測定したそうですから、実際のTpですと、曲がったり、継ぎ目があったり、と
いった形状の変化がさらに複雑に影響を及ぼしているのだと思います。ですから、実際のTp
での各倍音での管内定在波分布は簡単には予測はできないのでしょうし、逆にそれらの色々
と影響を及ぼしている要素を(原理的に把握してか単に経験則からかは別としても)巧みに
使って、全域に渡って音程の良いものや、高調波の周波数を揃えて美しい音色のものを作
る、といったノウハウをメーカーはきっと持っているのでしょうね。

ですから、のまさんの御指摘にもありました「クラッペンの位置はベルからかマウスピース
からか?」については、基本的にはベルからの位置(距離)で考えられるのだと思います
が、各倍音での腹・節の位置が単純に理論通りではないような気もしますので、それこそ
バロック時代からの経験則で、どのあたりに穴を開けるとどうなるか?という長年のトライ
アンドエラーの積み重ねで今の位置が確立されていたのではないかと思いますが如何でしょ
うか?で、問題の7,8,9倍音あたりは、クラッペンがついているチューニング管のあたりで、
節と腹の位置が恐らく入れ替わっているのではないかと思います。

クラッペンの効果の原理は、平たくいうと、モンケさんのおっしゃているように、近接した
7,8,9あたりの倍音列のうち要らない倍音をなくしてしまい、倍音の間隔を低次倍音間のよう
に広くして、はずしにくくするものだと思います。(厳密には倍音はなくなるわけではなく、
全く別の周波数のモードに変身してしまいます。穴の大きさによって、その変化の仕方は
変わってきます。)

この原理を別の事象に置き換えて直感的に考える場合、高校か中学の物理実験用にあった、
むかでの足のお化けみたいなものがあると一番良いのですが、他でイメージするとしたら、
庭樹に水をまく時に使う水道用ホース(できれば周りをワイヤーで強化したような重量のあ
るもの)の先端から1mくらいのところを持ってブラブラと振った時の振動現象に置き換えて
考えると良いかと思います。(この時、ホースの先端には噴霧用のノズルのような重量物は
無い方が良いです)だんだんと振る周期の速度を上げていくと急に揺れの振幅が大きくなり
ブランコのように大きく揺れだします。これが片側固定(閉端)片側フリー(開放端)の1次の
共振現象です。さらに周期を早めると振幅が小さくなり、暫くするとまた勢いよく振れだし
ます。これが2次の共振ですが、この時の振動モードは1次とは異なり、途中に一カ所振幅
のない節があらわれ先端は手の振れ方向とは逆に振れています。この要領でどんどん周期を
早めていくと、さらに高次の振動モードがあらわれてくるはずです。実際には7,8,9といった
高次のモードを実現させるのはかなり困難なため、仮に「1次のモードを避け2次のモードの
みを実現させたい場合」を考えると、2次のモードで節になっている箇所を空いている手の指
で輪っかを作って囲むようにすると、2次のモードは先ほどと同じように振らすことができま
すが、1次のモードは(当然ながら)振らすことができなくなります。これにより、1次の
モードを励起することなく、確実に2次のモードを励起させることができるようになります。
これは1次の振動モードの振幅の腹になる(なりたがる)部分の動きを規制することによっ
て、このモードが存在できなくなったからです。一方2次のモードは、元々その場所は節と
なって動いていなかったため、指によって動きを拘束されても全く関係ないのでモードは
存在できるのです。このホースの振動振幅を管内の音圧振幅に置き換えれば、全く同じこと
が言え、指での振幅の拘束の代わりに音圧の腹の部分に穴を開けて大気圧(静圧)にリーク
してやることで、その場所にあるべき元の高い音圧振幅が存在しえなくなりそのモードは
消え、元々その場所が節になっていて音圧振幅がゼロ(=静圧)のモードには全く影響しないと
いうことです。この現象を上手に利用したものがクラッペンなのだと思います。