re:奏法を変える事について  #13371
投稿者:  (2001/07/26 21:43)

僕自身、とても苦労したところなので、少々長くなるかもしれませんが、
お話させて頂きたいと思います。

先ず、「奏法」とは、アンブシュアと呼吸法のコンビネーションであることを
わかって下さい。どんなにきれいで強靭なアンブシュアでも、息を使わなければ
「ガス欠のフェラーリ」。 反対に、どんなに完璧な呼吸法を身につけても、
鼻でラッパは吹けません!

1に呼吸法です。僕が初めてジェイコブスのレッスンに行った時、彼が
僕に聞いたのは、「おまえ、何処に肺って付いてるか、知ってるか?」でした。
知らないわけ、ないですよねぇ。 でも昔から、よく先輩達に、「腹筋が...」
とか「へそのあたりが...」とか言われました。
つまり、僕は「へそのあたり」で呼吸しようとするのが「複式呼吸」
だと思っていて、ジェイコブスは僕に肺できちんと息をとりなさいと言ったのです。
実際どういう事か? 次の事を試してみて下さい。

a)お腹を8分めぐらいの力でひっこます。
b)へそに両手を当てて、お腹が出てこないように注意する。
c)息を吸う。(お腹をださないで...)

始めは戸惑う方もいるでしょう。しばらくそれを続けると、だんだん
胸の方でしか呼吸できない事に気付いてもらえると思います。
そうです、これが本来の「呼吸法」なのです。
肺に空気が入っていくのと同時に、横隔膜は下に広げられていきます。
横隔膜は、人間の意志でコントロール出来ません。ですから、
お腹を使って横隔膜をどうこうしようというイメージは、
持っても無駄だと思います。肩は、固定しようとせず、でも動かそうとせず、
息を吸うことによって「動いてしまう」のが、力も抜けていてよろしいと思います。
もしも、少し慣れてきたなら、お腹はひっこましたまま背中の方にも息を入れる感じで。(ボストン響のシュルーター氏のビデオ、あれば必見!)
(これに慣れたら、お腹はすこしリラックスさせてもよいでしょう。)
こうすることによって、息を沢山吸って有効(息のスピードアップ、圧力アップ
等)に使えるだけでなく、息を吸ってから吐く時への移行が楽になります。すなわち、音をいきなり当てる時等にも効果を発揮してくれる訳です。

息を吐く時は、ゴルフやテニス、バットのスイング、或いはピッチング等をイメージしてください。吸った息は止めずに吐きます。絶対にとめません! 上のスポーツの例で考えると、もしもバックスイング(吸気)からスイング(排気)への移行の途中で動きを止めたら...経験のある方ならお分かりでしょうが、ボールを飛ばすのに、2倍、3倍の力が必要になり、コントロールも難しくなります。という訳で、このような方法で楽器を「力ずく」ではなく操る事が可能になるわけです。

2にアンブシュアです。が、これはやはり大変複雑な要素が絡んできますので、
「僕流」の視点で意見を述べさせて頂くことを大前提に、寛大なるご理解とご了承の程、よろしくお願い致します。
「アンブシュアが気になる」のであれば、その人はある程度の「演奏経験」を既に持っておられると思います。よって、もう大体の「唇のこのへんにマッピを当てて」等のアイデアも、もう持っておられると思います。あなたの今のアンブシュアを出発点に話を進めたいと思います。
まず、あなたにお聞きしたいのは、あなたの前歯(あご)は「出っ歯型」ですか、「上下かっちり噛み合い型」ですか、「受け口型」ですか?
僕が思うに、マウスピースを下くちびるからあてて、上くちびるを多めにとって軽めにあてるやり方が、一番成功率が高いように思います。理由は、下あごを無理な形でセットせず(押したり引いたり等)、上くちびるの柔軟性を確保することが出来るからです。ですから、「出っ歯型」はラッパがかなり下に向き、「受け口型」はその逆になります。(ちなみに、僕は「出っ歯型」ですので、「受け口型」の方へのアドバイスは、正直言って自信がありません。申し訳ありません)
もう一つの大きな理由は、下くちびるの脇はポイントをきめて、多少引きますが(でも下くちびる事体は引いてはいけません)上くちびるの脇(特に鼻の脇の方)は、あまり引きたくありません。なぜなら、そうする事によって、上くちびるが薄くなるのと、人によっては上くちびるが上の前歯よりも上に(鼻の方へ)持ち上がってしまうため、特に高音と耐久力に支障をきたす恐れがあるように思われるからです。
これは、僕が参加したUCLAのドクター.ヒューザー氏の実験(口のまわりに「心電図」を取るときのようなセンサーを多数つけてトランペットを吹き、どのようにその人が口の筋肉を使っているかを特殊なソフトウェアをとうしてコンピューターのモニターに波形として映し出すもの。更に、プロのプレイヤー達の波形のデータと自分のデータを比較することもできる)でも明らかでした。 あと、口を
「逆への字」のようにして吹くと(頬の方向へ引きすぎると)、唇がきちんと閉じないという例もありました。
ここでの「筋肉の話」は、あくまでもひとつの「方向性」と考えてください(こんなのもあるんだぁ...ぐらいに)。鏡の前でにらめっこする必要はありません。

大切な事は、これらの事柄を一つのサイクルの中で練習します。
1.マウスピースを口に軽くあてる。
2.口のまわりの力を抜く。(ここで、耐久力の有無が変わる)
3.息を吸って、吹く。
4.マウスピースを口からはなす。

1.マウスピースを口に軽くあてる。
2.口のまわりの力を抜く。
3.息を吸って、吹く
4.マウスピースを口からはなす。

1...
です。
マウスピースの当てかたと息のバランスが噛み合ったとき、とても楽に音が鳴ります。

「奏法を変える」という事は、とても恐い事のように感じられがちなので、
「奏法のグレードアップをする」という風にアプローチしてみてはいかがでしようか? 車だって、取ったり付けたりで、市販車もレースカーになりますし。「鳴らし方」をわかってしまえば、「鳴る所」を見つけるのはそんなに難しくないとおもいます。

大変長くなりました。
僕としては、自分のような悩みを抱える方を少しでも助けて差し上げればと思い、このスペースを御借りいたしました。
まだまだ説明のしきれていない所が多々ありますので(申し訳ありません)、
ご要望がございましたら「パート2」を考えさせて頂きます。
どうもありがとうございました。