「らっぱのすけ」さんへ。  #13619
投稿者:  (2001/08/17 17:08)

「らっぱのすけ」さん、こんにちは。

>『下顎を広げ過ぎない』というのは歯の間の広さを広げないということですか?

はい、そのつもりで書きました!
「低い音」になると、どうしても口を広げるような形(「お」という感じ)を作ってしまいがちだと僕は思うのです。これに関する「息のスピード」以外の弊害としては、

1)(ピッチ等)コントロールする事が難しくなる。
2)タンギング、リップスラーが難しくなる。(上顎と舌の距離も遠くなる為)
3)口の脇の支えをキープする事が難しくなる。(口の周りの筋肉も一緒に伸びてしまう為。人によっては、これが原因で唇がマウスピースの脇から出てきてしまう。)

などが挙げられます。


>上顎、下顎の位置がよく分かりません。

「上顎の位置」は変えられませんよね!?(確認です...)

僕は、顎の「間隔」を確認する時、舌を下の歯の内側に付けたまま、普通に「せ」と言ってみた時の「口の中の」形(間隔)が一番自分に合っていると思っています。それから「ゆ、ゆ、ゆ」と連呼してみて、「ひらひら」と動いている所で「タンギング」や「リップスラー」をコントロールしています。
そして、この口の中の状態を保ったまま、口を「ふぅー」(「ふー」ではありません)という風に閉じます。
下顎の「前後」が分かりずらい時には、サックスやクラリネットのマウスピースを咥えて吹いてみることを僕はお勧めします。前後上下の顎の「感覚」と口の周りの使い方(「すぼめる」ための「引っ張る」感じ)はトランペットを吹く上でも大変参考になると僕は思っています。

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これから僕が書く事は、たくさんある内の「一つの方法論」として受け取っていただきたいのですが、僕がA.Jacobsという人とその御弟子さん達(もちろん、もう立派ならっぱ吹きさん達ですが)、そして、僕にとても良い影響を与えて下さった先生達から学んだ方法を総合した物で、今迄に僕がここのBBSに書き込んだ物の中からチョットだけ(!?)拝借してまとめてみることに致します。(管理人さん、ごめんなさい...)

まず、僕が初めてジェイコブスのレッスンに行った時、彼が僕に聞いたのは「おまえ、何処に肺って付いてるか、知ってるか?」でした。知らないわけないですよねぇ。 でも昔から、よく先輩達に「腹筋が...」とか「へそのあたりが...」とか言われていました。つまり、僕は「へそのあたり」で呼吸しようとする事が「複式呼吸」だと思っていて、ジェイコブスは僕に「肺できちんと息をとりなさい」と言ったのです。

実際どういう事か? 次の事を試してみて下さい。

a)お腹を8分めぐらいの力でひっこめる。
b)へそに両手を当てて、お腹が出てこないように注意する。
c)息を吸う。(お腹をださないで...)

始めは戸惑う方もいるでしょう。しばらくそれを続けると、だんだん胸の方でしか呼吸できない事に気が付いてもらえると思います。

そうです、これが本来の「呼吸」なのです!

肺に空気が入っていくのと同時に、横隔膜は下に広げられていきます。横隔膜は人間の意志でコントロール出来ません。ですから、お腹を使って横隔膜をどうこうしようというイメージは持っても無駄だと思います。肩は固定しようとせず、でも動かそうとせず、息を吸うことによって「動いてしまう」のが、力も抜けていてよろしいと思います。
もしも少し慣れてきたなら、お腹はひっこめたまま背中の方にも息を入れる感じで。(ボストン響のシュルーター氏のビデオ、あれば必見!)これに慣れたら、お腹はすこしリラックスさせてもよいでしょう。
こうすることによって、息を沢山吸って有効に(息のスピードアップ、圧力アップ等)使えるだけでなく、息を吸ってから吐く時への移行が楽になります。すなわち、音をいきなり当てる時等にも効果を発揮してくれる訳です。

息を吹く時に「鞴(ふいご)」の様なイメージは持たない方がよいと思います。なぜなら、息を吹く時に「(力ずくで)押し出す」と、その後、息を吸う時に「(力で)押し込む」事になり、どんどん苦しくなっていくでしょう。僕は、下から押し出すようにして吹くのではなく、「一番最後に吸った息」(肺の中の上の方)から「順番に」吐き出すイメージを持つようにしています。

「体を締めて息をひねり出す」と、次に息を吸う時に、肺がその最大のキャパシティーを使えるスペースを「殺す」ことになりかねません。ですから、「息を吹くにしたがって肺だけが小さくなってゆく」と考えた方がよいと思います。そうすれば、体内には常に一定の容積を保ちつつ、肺はのびのびと自分の仕事が出来るわけです。

そして、息を吐く時は、ゴルフやテニス、バットのスイング、或いはピッチング等をイメージしてください。吸った息は止めずに吐きます。絶対にとめません! 上のスポーツの例で考えると、もしもバックスイング(吸気)からスイング(排気)への移行の途中で動きを止めたら...経験のある方ならお分かりでしょうが、ボールを飛ばすのに、2倍、3倍の力が必要になり、コントロールも難しくなります。という訳で、このような方法で楽器を「力ずく」ではなく操る事が可能になるわけです。

・・・

僕にとって、これらを踏まえた後の「呼吸の感覚」は、「口から遠くない所」で息が「循環」しているという感じになりました。(心臓の辺りを中心に、肺が「上下に」というよりは、「前後に」広がる感じです)

「ところてん」で例えると、5m向こうの方から押し出す(言い方が悪いですが)のと、50cm向こうから押し出すのでは、出口での「ところてん」の「出方の反応」が違うと思うのです。
ですから、もしも「らっぱのすけ」さんが呼吸のポイントを「おへその辺り」に感じているとしたら、それは「遠すぎる」と僕は思うのです。そして「息のスピード」を上げる為には、口から近い所(決して「浅い所」と考えないで下さい)から息を吐き出しているイメージを持つ事を僕はお勧めします。(「一番最後に吸った息から順番に吐き出すイメージ」とは、この事を意味しています)

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>わたしの場合、息のスピード=音量になってしまうんですがどうすれば良いでしょう?
>特に高音域でピアノが吹けないのがかなり悩みです;

上記の説明を踏まえた上で、息を楽器に吹き込んだ時に次の4つの点を(「上顎(上の前歯の少し奥)」、「口先(ここで息を「まとめる」感じ)」、「マウスピースの中」、「チューニングスライドの上側のカーブ」)息の「線」が「つながっていく」イメージを持つ事を僕はお勧めします。
この「線」がピーンと張れるかどうかで「ピアノ」は決まります。(はじめのうちはmfぐらいで、この「感覚のみ」を練習してみて下さい。慣れてしまえば「音量」は比較的楽にコントロール出来るようになると思います)


>低い音を開かないで出そうとすると小さい音しかでません。

はじめのうちは、仕方がないと思います。でも諦めずに、口の外側の形をなるべく変えずに、口の「内側」を意識して練習してみて下さい。この時、喉を必要以上に開けてしまうと、息が外へ出て行きずらくなりますので注意が必要だと僕は思います。(顎の開けすぎにも注意して下さい)


>息のスピードはそのままで、息の量を変える練習があったら教えて下さい;

僕の場合、音を鳴らしている時には自分が「響きのボール」の真ん中にいるイメージを持つようにしています。(ビッグバンドをやる時にはあてはまらないような気がしますが)「ハミングした時に響く所」を、楽器を吹いている時にも「響かせるつもり」で臨んでいます。
僕がクレッシェンドをかける時、その「響きのボール」は、僕の周りでどんどん膨らんでゆきます。ディミュニエンドの時は、その逆です。「音を飛ばそう」という意識は、僕にとって「力む」原因となってしまいます。ですから、「息を吹く方向」と「響きが膨らむ方向」を僕は「別々に」感じるようにしています。このようにして「音域」と「音量」の方法を区別しています。

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くどい様ですが、これらは、あくまで僕の個人的な方法論ですので、他にもまだまだ色々な方法や考え方はあると思います。

ここまで(最後まで)僕にお付き合いして下さった方々、どうもありがとうございました。
「らっぱのすけ」さん、大変長くなってしまいましたが、説明になっておりますでしょうか?