「リラックスする」ということ  #13643
投稿者:  (2001/08/20 06:23)

「オレンジ」さん、こんにちは。

「オレンジ」さんもおっしゃる通り、トランペットを「(実際に)体を緩めながら」吹くことは難しいと思います。では、何を以ってして「リラックス」と呼ぶのでしょうか...?

「リラックス」という言葉は、一般的には「寛ぐ」、「のんびりする」、「緩める」といった類のように訳されますが、ここでは、僕はあえて「自分を(何かから)解き放つ」という風に解釈させて頂きます。


例えば、お母さんに座らせてもらうことによって、やっと一人でなんとか座っていることのできる、生まれて一年未満の赤ちゃんを想い浮かべてみてください。
この頃の赤ちゃんには、まだ「筋力」と呼べるような力で体を縦に保つような事はできません。
赤ちゃんは単純に「頭の重さに対するバランス感覚」のみで、置物のように座っています。ですから赤ちゃんは自分が呼ばれてそちらの方を向くと、すぐにバランスを崩して倒れてしまいます。

ところが成長するにしたがって「筋力」が付いてくると、少々の体のバランスの「歪み」(本来、赤ちゃんであれば座っていられない)を「筋力で修正」出来るようになってしまいます。例えば、頭が前へうな垂れているのを首や背中の筋肉で後ろから引っ張り上げるようにしてみたり...

この体の「修正法」は個人の「癖」となり、何年もそのようにして過ごしている内に、自分では見分けの付かない物になってしまいます。そしてこの「癖」
は、場合によっては本来の体のポテンシャルに「歯止め」をかけてしまいます。
(ちなみに、肩凝り、腰痛、首の痛みなどを常に持たれている方は、このような体の「歪み」を無意識の内に「修正」しようと働いている筋肉の「悲鳴」とも言えると思います。)

ですから、人間が何らかの動作を伴った上で「リラックスする」ということは、いかに「体に自分本来のバランスを取り戻させてあげる」、或いは「体の筋肉を必要以上の仕事から解き放つ」という「考え方」になると僕は思います。

イチロー選手の「振り子打法」や、バスケットボールのマイケル・ジョーダン選手の「変な体勢からのシュート」(いつでも彼が「舌」を出してプレーしている事からも「力み」の入っていない何よりの証明だと思います)などは、体を上手にバランスさせる事(リラックスさせる事)ができてこそ可能な技だと僕は思います。

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楽器を演奏する上で、この種の「癖」が最も顕著にでてしまう部分は、呼吸の際に体を「固定状態(基本的に体中ですが)、特に胸部の柔軟性を殺してしまう」所だと思います。(もちろん、それだけではありませんが...)

では実際、どのようにして自分の「体の癖」を見付けられるかというと...もしも「ヨガ」や「アレクサンダー・テクニック」などのレッスンがあれば、それに行かれる事を僕は強くお勧め致します。「癖」は一人一人全く違いますから、ここでこの事について書く事は少々危険で難しいのですが、「僕が出来る範囲」で「体の癖の無い状態を見付ける方法」に為り得る方法!を書くとすれば;

立っている場合;
1)腰を少し「反る」ようにして立つ。(普段から反っている方はここは省略)

2)お腹をひっこめる。(胸で呼吸する)

3)胸を少し上へ向ける。(深呼吸の時のように)

4)肩が胸の脇に「乗っかっている」感じで、腕は力を抜いて、中指にひもで「おもり」が「ぶらさがっている」感じ。(呼吸しながら)

5)顎をひく。頭の頂点を軽く2ー3回触ってみて、息を吸いながらそこへ目掛けて伸びていく感じ。

6)ひざを前後に「がくがく」させてみる。

*自然な「立ち方」が見つかりそうですか?或いは、前からその様に立たれていましたか?


座っている場合;
上体は「立っている場合」と同じですが、座る時は「尾てい骨」の方ではなく「お尻から太もも」の方にかけて、お尻をちょっと後ろに突き出す感じです。(頭と上半身の重みが、まっすぐにお尻に乗っかる感じです。まるで、先程の赤ちゃんのように。)

# 詳しくは、きちんと先生に付いてください。

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これらの方法と共にトランペットを練習なさる場合、息を吹く時に、「押し出して息を吹く」のではなく、「まず、口から息を吹いていくと肺が次第に小さくなってゆく」ことを思い浮かべてください。音域が高くなるにつれて、「押し出すスピード」ではなく「吹き込むスピード」が「速く」なっていくと考えた方がよいと思います。

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前置きが少し長かったかもしれませんが、一から話しはじめなければ僕には説明不可能だと思ったのです。
ちなみに「ヨガ」や「アレクサンダー・テクニック」は、欧米の音楽学校ではどんどん取り入れられて、もう幾つかの学校では「必修教科」となっています。

「オレンジ」さん、僕の下手な説明から何かを掴んで頂けるのなら幸いです。