re:楽器の音の発生原理  #25483
投稿者: サイトウ (2005/06/19 18:51)

面白そうな話題なので久しぶりに書かせていただきます。
「気流による音」という言い回しは確かに変だし誤解を招いてしまいますね。でも,「気流が振動を引き出す」という表現ならどうでしょう。私が体感していることからすれば,この感覚が体得できればずいぶん音が変わってくるし吹くことが楽になってくるのではないかと思います。藤井完師のHPは私もよく覗かせていただいておりますが,「ベルヌーイ効果による自励的振動」という言葉で説明されている内容です。
気流によって上唇が引き寄せられたり離れたりする音の鳴る原理,つまり唇は気流に対して受身であることを理解し体感できれば,唇に力を入れて硬くしたり,あるいは上から下から唇を締め付けたり,過度のプレスをしたりということが,いかに唇の自然な(自励的な)振動を阻害しているかが分ると思います。同じ唇の振動でも,硬く閉じた唇を無理に鳴らしに行こうとする地声のような発音と,緩やかに閉じたどんな気流にもよく反応する柔軟な唇から発音される音にはおのずから違いがあるのではないでしょうか。
私は特に高い音で,この発音原理を体が覚えているかどうかの違いが出てくるような気がします。われわれの子供のころのラッパの指導法は,マウスピースで音を鳴らすことから始まって,とにかくおなかに力を入れて強く吹くことを教えられましたから,高い音では特に唇に力を入れて閉じ,それをこじ開けるような息の吹き込み方をしていたわけです。高い音は筋力で出すものと信じて疑っておりませんでした。ですから,高い音を出そうとするときは,心も体も硬直して力任せに吹く。疲れる。ますます音が出なくなる。ますます力を入れようとする。この悪循環に陥ってしまったわけです。この悪循環を断つためには,力を入れずに吹くコツの習得が必要なのですが,大概は力を入れて吹き続けるための筋力の養成がラッパ上達の必須であるかのような勘違いが横行してしまう。
中川先生の写真と音つきの「ハイノートの吹き方」解説をHPで見せていただいたことがあります。付録の音はローB♭からダブルハイB♭その上のDを吹いてみせておられたと思います。その中で,確かハイノートに移行するにつれ,唇を締めるのではなく「ジワッと広げるような感じ」で,と解説されていたように記憶しておりますが,このこともハイノートの発音に際して,締め付けず唇の柔軟性を確保する為の方法と理解しておりました。中川先生の吹き方は,シラブルでハイノートを発音されていますが,この発音方法が今のラッパの半ば常識のように言われている奏法ですよね。でも今私がやっている発音方法は少し違います。ダブルハイB♭でそんなに極端なシラブルは使いません。息のスピードもまったく意識しません。何に気をつけるかといえば,音が発生するツボを外さないようにすることだと思っています。そのためには,喉から口元にかけての空間と息の圧力のバランス(文章での表現は無理),それと何より上唇の柔らかさ,唇を締め付けないこと,過度のプレスをしないこと。そういうことではないでしょうか。
長々と書いてしまいましたが,がちゃさんをはじめとする奏法に悩める方に少しでも参考になれば幸いです。
ちなみに,私は中川モデル18B4NCの愛用者です。悪しからず。