ヤマハロータリートランペットについて・・・その1  #4941
投稿者:  ロータリーTrp1号 (99/10/20 12:51)

 ご期待を裏切ってはいけないので、登場させていただきました。ロータリーに関して、私なんかはユーザーの端くれも良いところでして、この話題以外のところにも、ロータリーの大御所さんがたくさんいらっしゃますから、なんか面はゆい気がいたしております。 さて、ヤマハのロータリーですが、1977年頃、YTR−935(B管)、945(C管)が初登場したようです。たまたまいった広島の楽器店では、広響のプロの方が購入済みと表示された、935があったように記憶してます。つまりあのころは、おそらくプロもそう選択の幅はなかったはずで、ヤマハ、モンケ、シェルツァー、ガンターぐらいだったんでしょう。洋物は渋谷のネロ楽器さんの独占状態だったんではないでしょうか。
 935、945が誕生した経緯は以下のようです。(誤りがあればどなたか訂正して下さい。)VPO(ウイーンフィル)のヴァルター・ジンガー先生(当時のトップ)が、永年使用してきたヘッケル(ドイツ、ドレスデンの伝説的名器)が使用に耐えきれなくなったとき、世襲が禁じられるなどの政治的理由もあって、旧東独ではヘッケルがなくなってました。跡を継いだヴィンディッシュも、ヘッケルトランペットのことについては、東独の国家機密的扱いにされたようで、ヴィンディッシュオリジナルスタイルのラッパは作れても、ヘッケルスタイルの楽器はもはや作れなかったのかもしれません。(今は、さらに後を継いだベルントマイヤーがヘッケルを復活させました。)そのため、新しい楽器を購入する必要があったのですが、生産中止されて久しいヘッケルの状態のいい物を手に入れるのは非常に困難。また、ロータリーもメーカーによってかなり違いますので、ロータリーでありさえすればよいのなら、他のメーカーの新品はいくらでもありますが、やはり、ヘッケルの良さを持ち合わせる物はなかったんでしょうか、それでは満足しなかったようです。また、オーストリア放送協会が、より安定した性能を持つピストン型に変換を迫ったという事情もありました。詳しいことはわかりませんが、おそらく、当時のロータリーラッパは性能的には今よりだいぶ劣り、音程とか吹きやすさなどの点から見ると、満足いく物は少なかったんでしょう。1970年代までのウイーンフィルや、特に東独の楽団の録音を聞くと、音程的には少し怪しい気がします。そこで、ウイーンフィルの来日に合わせ、ヤマハをを見学したジンガーは、なにをおもったか、辺境の地、日本のヤマハにラッパのことを託す気になったのです。時に、1973年頃のことのようです。ちなみに、この頃のウイーンフィルの映像(バーンスタインとのマーラーの映像など)を見ると、メンバーのほぼすべてがヘッケルのようです。(続く)


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