ラッパの歴史と文化  #5061
投稿者:  ロータリーTrp1号 (99/10/28 11:52)

 おもしろいですね。この話題。私がロータリー啓蒙委員会の
一員だから言ってるわけではありません。どんな楽曲にどん
な楽器が合うか。これは音楽の技術論ではなく、まさに芸術
という枠を越え、文化そのものを論じていると思うからです。

 私は、恥ずかしながら世界史は全くの不勉強で、わからな
いことだらけですが、トランペットの歴史そのものについては
学校の歴史の授業のように、文献にまとめたり、講義する
ことは誰でもできるかもしれません。でも、今、ここで話題に
なっている事柄などは、音楽そのものに対する知識、作曲者
の人物やその歴史背景などの知識に加え、トランペットの演
奏技術と音楽家としてのセンスがある人でないと十分に説明
できないでしょう。こうした文献は、世界的にはあるのでしょう
が、日本ではなかなか目にすることができないように思います。

 エドワード・H・タ−ルはその著書の中で、ドビュッシーとマー
ラーを同じ楽器で演奏することは不都合であろうと言ってます。
しかし、BPOやVPOなどはどちらもロータリーで演奏しますし、
アメリカの楽団の多くはどちらもピストンで演奏するでしょう。
これはどう考えるべき何でしょうか。N響は、フランス物はもち
ろん、チャイコフスキ−などのロシア物はピストンで、ドイツ物
はロータリーでとかなり機械的に分けているようです。これは
正しいのでしょうか。 ロシア国立響のラッパ奏者が、「我々の
イメージするフォルテはドイツなどのそれと違い、もっと明るく
輝きのあるもので、それに合わせて楽器とマウスピースを選
ぶ(ロシアのオケはMPの口径が比較的小さい)」と言ってい
ます。そして、楽曲によって楽器を変えることは基本的にせず、
バックのB管で5CのMPでみんな吹いちゃいます。あれでブル
ックナーをやられると、違和感があるなんて聞きますが、今のロ
シアのオケのチャイコは本物で、ブルックナーやブラームスは
本物ではないのでしょうか。

 BPOやVPOが何でもロータリーで演奏するのは、あるいは
ロシア国立響の姿勢は、一旦楽曲を自分たちの領域に近づ
け、そこから楽曲に近づいていこうとする姿勢があり、それが
オケのアイデンティティーになるのだと考えているのではない
かと、勝手に解釈しております。その意味では、彼らの方法
は理解できます。楽曲ばかりが先行すると、確かにオケの個
性はなくなりますからね。作曲者の意向が第一とは言っても、
多くの作品はすでに作曲者の元を離れ、一人歩きし、普遍性
を確立していると言えるように思います。

 作曲者の意向をホントに大事にするなら、その時代の楽器
を使うべきでしょう。とすれば、古典派などは古楽器で、ロマ
ン派も、ブルックナーやマーラーなら長管F管(ロータリーやウ
インナバルブの物がありますよね。)で演奏すべきでしょう。と
すれば、ロータリーかピストンかなんて、実は次元の低い話だ
ったりする。でも、こう考えるのは、現在のシステムの楽器を否
定することにもなりかねない。近代物以外、モダンTrpでは吹
くべきでないなんて言われたら、困っちゃいますね。コルネッ
ト問題もあり、パイパーズ誌でD.ドワヨンが書いてましたが、
確かに、オケでコルネットを必ずしも使わないですね。これは
どうでしょう。

 やはり何でもいいんでしょうね、結局。(コルネットなどにつ
いてはもっとちゃんと考えないといけないでしょうが。)奏者
や楽団、指揮者にそれぞれの考えがあり、それが人やところ
により様々。またそこにはそれぞれなりの理由と主張がある。
それを聞き手もいろいろと考え受け止める。おもしろいですね。
決して耳年増になるということや、頭でっかちになるということ
でなく、でも、そんな楽しみ方も、音楽にはあるんですね。

ロータリーTrp1号(ロータリー啓蒙委員会)



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